土鍋づくりこそ失敗に終わりましたが、私たち渡辺義一製作所の“試す”精神に終わりはありません。何か新しい分野はないかと常に探しつづけるなか、私たちが目をつけた分野の一つが「音」でした。
振動・騒音を低減する樹脂製の遮音シートが製品化されているのを見て、「もしかすると、三角メタルファイバーにも、遮音効果があるのではないか?」と考えたのです。さっそく私たちは、三角メタルファイバーを持って、専門家のもとを尋ねました。騒音や振動、遮音性能などを測定してくれる(株)環境工房という会社です。専門の装置で測定したところ、驚きの数値が出てきたのです。
測定結果は、すでに評価を受けている樹脂製の遮音シートよりも、三角メタルファイバーのほうが、大きな騒音低減効果が見込めるというものでした。
三角メタルファイバーには、ミクロン単位の多角形の金属片が無数に焼き固められています。「角」が多いぶん、音はさまざまな角度に反射します。無数に反射した音が、
ファイバーの中でぶつかり合い、打ち消し合うのだと考えられます。
私たちは、その測定結果を持ち、ある大手家電メーカーを訪れました。騒音の低減が必要な家電製品に、三角メタルファイバーを活かしてもらえないだろうか、と考えたのです。
そして現在、冷蔵庫、掃除機、エアコンの室外機などで、三角メタルファイバーの力を使った新しい製品開発が始まっています。近い将来、私たち渡辺義一製作所の三角メタルファイバーによって、これまでにない静かさを手に入れた家電製品が発売されるかもしれません。
三角メタルファイバーを使って始まった「音」の分野の取り組み。しかし、私たちは、他にも有望な分野があるはずだと考えています。
たとえば、発想を変えて、プランターの底に敷いてみたらどうでしょう。ミクロン単位のすき間から徐々に水分を通していくので、プランターの中の水分量を調節するのに、ちょうどいいかもしれません。
かつて私たちは、「生卵を混ぜるには、○の箸よりも△の箸のほうがよく混ざる」という身近なアイデアから、画期的な製品(特許申請中)を生み出しました。次の新製品のアイデアは、あなたの身近なところに眠っているかもしれませんよ。